鳥取・智頭ツアーで学んだこと |
島根大学4年生 田中 晃一 |
2010.9.7 |
【森のようちえん】
自然の中で過ごすことで、子どもは考える力が身に付くと思いました。なぜならば、子どもはずっと森のなかで過ごすので飽きることもあり、そうなれば、自分たちで知恵を使って新しい遊びを考案するとのこと。木を使ったり、葉っぱを使ったり・・・みんなが工夫して遊ぼうとするから、面白い遊びが生まれると同時に、個人個人に考える力が身に付くのだと思いました。
また、毎朝、事務所に集合して今日一日何をするのかということも子どもたちで決めていることに驚きました。用意された遊びではなく、自主的に遊ぶ。そこに想像力も生まれる。森のようちえん自体はまだ始まって1年強だが、将来、子どもたちがどんな風に育つのか楽しみである。ドイツのほうでは、このような自然のなかで過ごす幼稚園が一定の地位を占めているとか。それは4、50年の歴史があり、科学的にも有効性が証明されているらしい。
この森のようちえん、山陰をはじめ、全国に普及してほしいと心から思いました。それは、いま必要とされる、「生きる力」や「考える力」が身に付くと思うからです。さらに、自然のなかで遊ぶので、身体も鍛えられ、感性も敏感になる。これまで、幼稚園のイメージは野外の遊具で遊んだり、お昼寝をしたり、ゲームをしたり、大人たち主導で子どもが育てられると思っていたが、智頭ではまったく違って、子ども主導で子どもたちが育っていることにびっくりした。
既存の普通の幼稚園と森の幼稚園。この二つの選択肢を選べられる社会になれば良いなと思いました。
【NPO新田むらづくり運営委員会(岡田 一さん)】
岡田さんの話を聞いて印象的だったのは、「NPOも自立の時代」とおっしゃったことだ。今の税制を考えると、NPOも商売をしないと活動が継続できない。いつまでも行政のおんぶでは良くないという高い理念が岡田さんから感じ取れた。その岡田さんが取り組んでいることに、新田カルチャー講座をいうのがある。これは、外部から先生をお呼びし講演してもらう小さな、ささやかな勉強会のことだ。
しかも、ゲストがすごい。亀井静香氏や辻本清美氏のようなお大物議員や地域づくりにおいて第一線で活躍されている大学教授や自治体の長などが名を連ねている。これらは、岡田さんが直接お願いに行っているというから驚きだ。さらに、カルチャー講座のきっかけは、「変化の多い時代だから、勉強しないといけない。しかし、何を勉強すれば良いのか?」という疑問からスタートしている。そして、様々な分野の専門家に講師として来ていただく。これらは全て、意識の高い、しかもそれをきちんと形にできるリーダーの存在が大きいと痛感した。それが、岡田さんなのだと思った。
また、今の年金の在り方についても、面白い話を聞いた。今の制度は若者に負担が掛かっている。それは、年収における年金支出額が相対的に大きいからだ。要は、若者が苦労して稼いだ数少ないお金が、TVを見たりグランドゴルフする高齢者の生活を支えているのは、不公平だということ。週に2日ぐらいは、お世話になっている若者のためにボランティアで社会貢献しなさい、ということ。なるほど! と思うと同時に、そういうことが年金をもらっている立場の人から出て来たことが嬉しかった。
【学生人材バンク】
久しぶりに会った代表の田中玄洋さん。今回も、色々学ばせてもらいました。まず最初に、人材バンクの基礎は社会人との飲み会にあったという話。飲み会を通して頻繁に社会人の方と接するなかで、大学院への進学は決まった時に学生人材バンクを設立したそうです。目的は「何か面白いことがやりたかった」ということ。
そういう経緯で人材バンクが出来て、学生を地域に連れていく活動が始まった。昨年は300人の学生が、一昨年は500人の学生が地域の活動に参加した。連れていくキーワードは、「食」と「人」。まずは、おいしい「食」で人を惹きつける。そして、「人」に出会わせ、リピーターとなってもらう仕組みだ。
さらに、農村への切符として使ってほしいと「農村16きっぷ」という冊子も作り、農村に興味のある都会の学生との交流事業「村咲ク」プロジェクトも実施している。また、「ハイジャック会議」を企画し、街の不満を消すユニークな取り組みも行っている。
最後に、田中玄洋さんがいうには、NPOは食べていきにくいと。行政からの委託金等で運営している人材バンクだが、行政の考える人件費と現場との考え方にギャップがある。だから、うまいことお金が回らないそうだ。なので、自主財源を確保する意味でも自分たちで事業をする必要性があるということをおっしゃられた。
その他、空き家を貸してくれるまで約4年掛かるなど、有意義な情報を聞けてよかった。
【鳥取・智頭ツアー全体について】
今回のツアーで一番学んだことは、島根と鳥取の山陰両県はもっともっと繋がるべきだと思いました。高齢化率日本一の島根県と人口が日本一少ない鳥取県。山陰と呼ばれるだけあって、共通点も多い。お互いにもっと情報交換をして、お互いに高め合い切磋琢磨する環境を作り、日本各地に通用するモデルのノウハウを提供できるだけの実績を作れば面白いと思います。「競争のないところに発展はない」わけですから、島根に留まらず、もっと広い視野を持って山陰同士の交流の重要性を改めて認識させてもらえたツアーでした。 |
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